第7章 ショコラ scene5
もしかして、お父さんかお母さんがお武家の出なのかもしれない、なんて想像した。
「ゆきお兄さま…ちか、病気で男の子になったの…?」
「そう…だね…」
間接的にはそうなるのか…
病気で亡くなったから、今、雅紀の体にいるわけで…
なんと答えていいのか、わからないみたいだった。
「……ちかちゃん」
幸雄さんはまたこめかみに手を当てていたが、ふと手を離した。
「女の子でないといけない理由があるんだね?」
その口調は、行長先生そのものだった。
顔も、先生にそっくりだから、ドキッとした。
「ちか、かあさまと約束したの…」
「約束…どんな約束かな?」
ぎゅっと手に力が入った。
「……およめさま……」
ああ…
なんとなく、わかった。
やりたいことはない。
でも”なりたいもの”は、あったんだ。
だから、霊体だけ成長してるのかもしれない。
ちかちゃんの時間は、5歳で止まってしまっているのに。
「…かあさまと…約束したの…およめさまになるって…」
「そうだったんだね…」
ちらりと俺の顔をみたが、うーんと唸ってる。
「かあさまに、見せたいの…ちかのおよめさまになった姿を…」
ぼそぼそと呟くと、目から一筋涙がこぼれた。
「でも…ちか、男の子になっちゃった…」
ぎゅうううっと、俺の手を握る手に力が入った。
ちょっと痛い…雅紀ぃ…