第7章 ショコラ scene5
幸雄さんは目を開けると額から手を外して、雅紀inちかちゃんの顔をじっと見た。
俺もつられて顔をみたら、目を閉じてじっとしている。
「ははあ…ちかちゃんは5歳でときが止まってるということは…」
うんうん、と一人で頷いている。
「ちかちゃんは、病気で亡くなったのが5歳ですね…」
おお…そういうことなのか…
「でも、今、視えている霊体の姿は、10代の女性の姿です…」
やっぱり、成長してる…
どういうことなんだ?
それから、幸雄さんは次々とちかちゃんに質問をしていく。
雅紀inちかちゃんは、目を閉じながらそれに答えていく。
ちかちゃんは大正の末から昭和の初期に生きていた人だった。
なにしろ5歳でときが止まっているから、これを聞き出すのに、だいぶ苦労した。
大きな地震のことを覚えていたから、なんとかそれが判明した。
多分、関東大震災だろう。
お父さんは軍人で出役していて、お母さんと長くふたりだけで生活をしていたようだった。
あの神社の近くで、お母さんと生活しながら、お父さんの帰りを待っていたそうだ。
「なるほど…じゃあ、お父さんもお母さんももう、故人でしょうね…」
ぼそりと呟くと、少し汗を拭いた。