第7章 ショコラ scene5
不意に顔をあげると、俺の顔を見て頷いた。
「ちかちゃん…」
「はい…」
幸雄さんは頷いて、ちかちゃんの額に触れた。
「ちかちゃんは…病気をしていたことは覚えてるんですね?」
俺の顔を見るから、頷いた。
「はい…苦しかったと、言っていました」
「なるほど…」
少し目を閉じると、また開いた。
「ちかちゃんは…お年はいくつかな?」
「いつつ…」
「えっ…」
思わず声が出て、慌てて口を閉じた。
だって…
昨日、いつつって言ってたときよりも、今はぐんと大人びてる。
もっと成長したと思っていたのに…
「櫻井さん…?」
「す、すいません…あの、昨日もいつつだって言ってたもんで…」
「え?」
「いえ…昨日そう言ってたけど、今日はもっと成長してる感じがするんで…」
「ああ…」
こめかみに手を当てると、また目を閉じた。
「そう…あのですね…実は僕にもちかちゃんの姿が見えてまして…」
「えっ」
「もっと、大人に見えます…ちかちゃんの姿…」
幸雄さんは視えないって仰ってたけど…
多分、形代を身につけてるから、視えてしまったんだろう。
「でも…ちかちゃんはいつつ…」