第7章 ショコラ scene5
「あ、櫻井さん」
「はい!」
「相葉さんの…いえ、ちかちゃんの手を握っていてもらえますか?」
「わ…わかりました…」
「そのほうが、リラックスできると思うんで…」
雅紀inちかちゃんの横になってるソファの横の床に座って、手を握った。
「かあさま…」
「大丈夫だよ。しっかりこのお兄さんの言うこと聞くんだよ?」
「はい…」
その間に幸雄さんは、いつも行長先生がそうするみたいに、ローテーブルに座った。
「あ…すいません。行儀が悪いんですが…こうさせてもらいますね…」
「いえいえ…気にしないでください」
そう思って、ローテーブルの上は空けておいたんだが、正解だった。
実際に対話中の先生を見ることはなかったが、呼ばれて中に入ると、先生は雅紀を見ながらローテーブルに腰掛けてることがあったから。
対話が長くなれば、立ってるのもつらいもんなぁと思ったのを覚えてる。
「他に何かあれば、遠慮なく言ってください」
「いえ…これで、大丈夫」
そういうと少し緊張した顔になった。
「では…開きます…」
膝の上に肘をついて、手のひらをぐっと額に押し当てた。
そのまま祈るような姿勢で、しばらく幸雄さんは目を閉じた。