第1章 バニラ
「好き…智…」
小さな声で、和也が囁いた。
「うん…」
そっと俺も、腰に腕を回した。
「俺も…すき…」
「…子供の俺じゃなくても…?」
「え?」
なんだ…もしかしてそんなこと気にしてたのか。
「なんでだよ。子供だろうが、中身は和也だろ?」
「智…」
「別に俺、外見で好きって思ったわけじゃないし…」
あれでも。
なんで急に、好きって思ったんだろ。
直前まで、そんなこと思ってなかったのに…
いやちょっと、しょた?ニノにクラクラしたけどさ。
えっちされたから?
好きって言われたから?
「ほんとに…?」
小さな小さな声で…
なんだか和也は泣きそうだった。
「ばか…何年の付き合いだと思ってんだよ…」
そうだよ…
そんなこと、どうでもいいじゃないか。
だって、そう思ったんだもん。
こんなに長く一緒にいた仲間だし、男だけど…
そう思ったんだもん。
すきだって…思ったんだもん。
「嘘なんかつかないよ」
そう言ったら、またぎゅうって抱きしめられて…
苦しいくらいだった。
「うん…うん…」
「和也…?」
「ありがとう」
それから、和也は謝らなかった。
それが、なんか嬉しくて…
きゅっと心が暖かくなって。
なんだか、俺…
しあわせだなって思った。
なんでこうなったのか、全然わからなかったけど。
でも、しあわせだからいいや。
て、俺、単純なのかなあ…?