第1章 バニラ
そっと腕を伸ばして、和也のむき出しの背中に回した。
きゅっと力を込めて抱きしめると、すごく胸が一杯になった。
これ、何かな…
なんか、すごくしあわせ…なのかな…
「えへへ…」
嬉しくて、またにやにやしてしまった。
「智…」
なんか、声が元気なかった。
腹減ってんのかな。
こいつ、言わないと飯食わないもんな。
飯食ったら元気になるかな。
「なんか、食う?」
「え?」
「俺、なんか作ってやるよ」
そう言って身体を離そうとしたら、今度は和也が俺のことぎゅっと抱きしめた。
「俺が…作るから…智は、休んでな?」
「え?」
「だって、痛いでしょ…?」
「痛いけど…」
そう言ったら、身体を離して和也が俺の顔をじっと見た。
「なら、休んでな?」
「うん…」
またちょっと切ない顔をした。
どうしたんだろ…
どうしてそんな顔するんだろ
和也の顔を両手で包んで、ちゅってキスしてみた。
「っ…!さ、智っ…」
「え?だめだった…?」
だって…好きな人がそんな顔してるの…どうにかしたいじゃん。
「だ、めじゃないけど…」
「元気でない?」
「でた…」
なんか知らないけど、真っ赤になって。
それからまた、ぎゅうって俺のこと抱きしめた。