第7章 ショコラ scene5
「えへへへ~…」
帰りの車中で、雅紀はずっとニヤニヤしてる。
「なんだよ…気持ち悪ぃな…」
「気持ち悪いっていうなよっ」
「だって…そんなニヤニヤして…」
「だってぇ!懐かしいんだもんっ」
今、雅紀が着てる服は、俺が実家に置いたままにしていた、昔の俺の服だった。
それを取っていたらしく、母親がさっき引っ張り出してきて。
「まあ、懐かしいけどな…」
もう随分袖を通してない、古いものだ。
「これ、翔ちゃんがジュニアの時によく着てた服じゃん」
「よく覚えてるな…」
「だって…ずっと見てたんだもんっ」
あの頃、全然喋ったこともなかったけどなあ…
雅紀はジュニアの中でも目立つ存在だったし。
TV番組ではよく前の方に座ってたし。
俺はテスト期間は仕事しない約束になってたから、久しぶりにスタジオとかレッスンに行くと、疎外感を感じてしまって…
雅紀みたいにはしゃぐことなんてできなかった。
だから、羨ましいなって…ちょっと思ったりもしてたんだよね。
「恥ずかしいことばっか言ってんじゃねえよ…」
「んふふ…照れてる…」
「照れるわっ」
「今日は嬉しいこといっぱいだなあ」
また雅紀は助手席でニヤニヤし始めた。
「翔ちゃんの昔の服もらったしー。翔ちゃんの姪っ子ちゃんといっぱい遊んだしー…」
「ぶ…」
もお…おまえ、どんだけ俺のこと好きなんだよ。