第1章 バニラ
急いでトイレに行ってから、そっと洗面所のドアを開けた。
その奥が脱衣所になっていて、更にその奥にバスルームがある。
入ってみたら、やっぱりバスルームから音がした。
「シャワーしてんのか…」
ニノが着てたパジャマが脱ぎ散らかしてあった。
手にとって、洗濯機に入れようかと思ったけど、なんか匂いを嗅いでしまった。
あの不思議な匂いは、もうしていなかった。
「あれ…なんの匂いだったんだろ…」
匂いを嗅いでたら、シャワーの終わる気配がした。
「っ…」
なんだか知らないけど、心臓がドキドキして。
その場から動けなくなった。
カチャッとバスルームのドアが開いて、ニノが中から出てきた。
良かった…
ちゃんと大人のニノだ。
「あ…」
素っ裸で水の滴るニノは、俺の顔を見て気まずそうな顔をした。
「おはよ…」
それだけ言うと、バスタオルを手にとって体を拭き始めた。
俺はなんだか、まだ動けなくて…
「…どっか、痛い?」
「えっ…ああ…うん…」
「だよね…」
そう言うと、長い長いため息を付きながら、腰にバスタオルを巻いた。
「ごめん…」
俺の方、見ないで…
また、謝ってる。
「ニノ…?」
あ、違ったっけ…
「え、と…和也…?」
「えっ…」
驚いた顔で、ニノが俺を見た。