第6章 ビリジアン withあにゃ
部屋の前のチャイムを押すと、今度はすぐにドアが開いた。
と思ったら、顔が見える前に強く手首を掴まれて。
部屋の中に引っ張られた。
その勢いに、前につんのめって。
智の腕の中に飛び込んでしまった。
あの日以来の感触に、心臓が跳ね上がる。
智の体は、まるで外にいたように冷え切っていた。
「ご、ごめん…」
「…バカか、おまえ」
呆れ果てたと言わんばかりの声が、耳元で響く。
「入れてくれて、ありがと」
ぎゅっと抱きつくと、無理やり強い力で引き剥がされた。
「別に。あんなとこで騒ぎになったら、俺が困るから」
さっと背中を向けて、奥へ入ってく。
まるで、俺に表情を見せないようにしてるみたいだ。
「ごめんね、突然。なんとなく…智と飲みたくてさ」
竦みそうになる足を奮い立たせて、その背中を追いかける。
「でも、あれもこれもって買ってたらすんごい重くなっちゃってさ~。手が千切れるかと思ったよ」
なにも言わない背中に向けて、わざと明るい声を出した。
「とりあえず、冷蔵庫に入れてもいい?あ、勝手にキッチン入るね」
智が今なにを思ってるかわからないのが怖くて、逃げるようにキッチンへ向かおうとした手を、ぐっと掴まれる。
びっくりして振り向くと。
あの闇に支配された瞳が
俺を突き刺した
「飲みに来たんじゃなくて…抱かれに来た、の間違いだろ?」