第6章 ビリジアン withあにゃ
もう一度、電話を掛けてみた。
でも、やっぱり応答はない。
一つ大きく息を吐き出すと、目の前のマンションを見上げた。
恐らくあそこだろうと当たりのついた部屋は、明かりが灯っている。
もう一度深呼吸をすると、インターフォンの前に立ち、震える指で智の部屋番号を押した。
何度も何度も。
応答しないそれを押し続けた。
『…なに?』
軽く20回は超えた頃、ようやく返事が返ってきた。
「飲もうよ。差し入れ持ってきたんだ!」
わざと明るい声で、ぶら下げたビニール袋をカメラの前に出した。
『…帰れ』
冷たい声で言われるのは、想定内。
「やだ」
『…雅紀…』
「開けてくれるまで、帰んない」
『そんな脅しには乗っかんねぇぞ』
「ふぅん…じゃあ、ここが、嵐の誰かの自宅マンションだってバレてもいいんだ」
俺は、被っていた帽子を取った。
智は、黙り込んだ。
「開けてよ」
もう一度言ったとき、後ろで人の気配がして。
「あれ…?嵐の相葉くん…?」
若い女性の呟きが聞こえる。
俺は振り向いて、アイドルスマイルを浮かべて会釈してやった。
「えぇっ…!ホンモノ…!?」
黄色い歓声が上がった瞬間。
エントランスのドアが開いた。