第6章 ビリジアン withあにゃ
びっくりして、手を引っ込めてしまった。
「…ぅ…」
安らかだった智の表情が、苦悶のそれに変わる。
なにかに耐えるように、唇を噛んで。
伸ばしていた足を引き寄せ、怯える子どものように膝を抱えて丸くなった。
額には、汗がビッシリと浮かんでいて。
「…たす…けて…」
落ちた、小さな呟きは
まるで慟哭のように聞こえた
俺は、首から下げていたタオルで、そっと涙を拭いた。
きっと、夢を見て泣いていたことを、俺には知られたくないだろうから。
汗も拭いてやろうとすると、もぞっと動いて起きる気配がして。
俺は、慌てて傍を離れ、テーブルを挟んだ向かい側に座った。
起き上がった智は、視線を床に落としたまま、膝の上に両肘を乗せて、俯いた。
よく見たら、体は小刻みに震えている。
その姿は、息苦しくなるほど孤独で。
駆け寄って抱き締めたいって衝動が、マグマのように溢れ出てきた
「…どうしたの…?」
声を掛けるとビクッと震えて。
顔を上げ、一瞬だけ怯えたような目を向けたけど。
すぐに、いつもの笑みを貼り付けようとした。
でも、出来なかった
俺から逃げるように楽屋を出て行く後ろ姿は、やっぱり孤独で。
「…智…」
胸の奥が、苦しくなった。