第6章 ビリジアン withあにゃ
数日後、予約された病院に検査に赴いた。
マネが運転してくれて、事務所の送迎車で近くまで送り迎えしてくれる。
「じゃあ、終わったら連絡下さい」
「うん。わかった。じゃあね」
古い古い…こんなとこ、誰が来るの?っていう泌尿器科。
神奈川の山の方にあって、本当に最寄りは小さな駅の小さな街。
ここなら噂にもならないし、医者も口の堅いおじいちゃん先生だから安心なんだよね。
キイキイと耳障りな金属音を立てるドアを開けて、受付にいるおばあさんの事務員に保険証を出す。
診察券なんかない。
待合室でキャップを目深に被りながら、スマホを見て時間を潰す。
なぜか待合室には手を洗うところがあって。
そこの蛇口から、ぽたりと時々水の滴が落ちてくる。
…嫌だな…
思い出す
もう、思い出したくないのに。
雅紀のせいでイライラしてるから…思い出してしまうんだ。
あのときも…
こんな病院にいた。
古くてかび臭くて…
誰も居ない待合室
どこからか聞こえる水の落ちる音
もう、忘れたいのに。
思い出したくないのに。
「大野さん、どうぞ」
おじいちゃん先生の声が診察室から聞こえてくる。
「はーい…」
気の抜けた返事をして、診察室に入っていった。