第6章 ビリジアン withあにゃ
「行こうか」
「え…?どこ、へ…?」
「…知らない世界、教えてやるよ」
おーちゃんは俺に手を伸ばしたまま、視線だけで奥へ続くドアを示す。
そこは、恐らくベッドルーム。
「で、でも…」
思わず、一歩後退った。
おーちゃんは、動かない。
ただじっと、俺を見つめるだけ。
まるで
選ぶのは俺だと言わんばかりに
「…おー、ちゃ…」
この手を取ったら
後戻り出来ない気がする
だけど…
「知りたいんだろ?」
それは
甘美な誘惑
そう
知りたい
あなたの全て
俺に見せて
「来いよ」
強い言葉に、背中を押されて。
つんのめるように、その手を取った。
すぐに強く抱き締められて。
熱い手が髪を撫でる。
「可愛いね…雅紀は…」
ゾクリとするような低音で囁かれ、心臓が跳ね上がった。
「…もっ、と…」
「え…?」
「もっと…呼んで…?名前…」
本当のあなたに
呼んで欲しい
「…雅紀…」
おーちゃんの艶めいた声が、それまでの俺の輪郭を溶かしていく。
「…おーちゃん…」
「違う。智、だろ?」
「…智…」
あなたの名前を呼ぶと、ふるりと体が勝手に震えて。
あなたはヒドく満足そうに、嗤った。
「…行こう」