第1章 バニラ
逃げようとしたその瞬間、ニノの手が俺の目を塞いだ。
「声に、集中して」
「…え…?」
「俺の声、聞いて…」
ニノの手が熱い。
また不思議な香りがした。
あの匂いだ
頭の芯が、一瞬くらっと揺れた。
なんだコレ…
「今から大野さんは、俺のことすんごい好きになるよ…」
「え…ちょ、ニノ…」
「黙って…」
ごそっと動いたかと思うと、ケツに熱いものが押し当てられた。
「大好きだよ…大野さん…」
え…?
今、なんて言った?
「あっ…」
考える間もなく、その熱い塊は俺の中に入ってきた。
こじ開けるように、ゆっくりゆっくりと登ってくる。
「大野さんも…俺のこと、好きになるよ…」
囁くような声は、俺の頭の中にぐわんぐわん響くように入ってくる。
「ま、待って…」
ニノの手が離れていって、視界が明るくなった。
目を開けると、ニノが俺のこと見下ろしてる。
「あ…」
どうしよう。
「ニノ…」
すっごい好き
「なに…?大野さん…」
「や…やだ…え…?」
顔が一気に赤くなるのが、自分でもわかった。
「ふふ…言って?どうしたの…?」
ぐいっと俺の中に食い込むように身体を前に倒してきた。
眼の前に、ニノの顔がある。
「智…」
ゾクっとした
ニノの声が、俺の名前呼んだだけなのに。
鳥肌が立った。