第6章 ビリジアン withあにゃ
ただ入れて出すだけの行為を、なんで複数人でやんなきゃいけないんだ。
入れる穴は一個あればいいだろ。
「ほんと…冷たいんだから…でも、それがいい」
ぺろりと俺の耳を舐めていくと、女は笑った。
「やっ…ちょっと!やめてよ!今日は、智は僕のなの!」
「いいじゃない…減るもんじゃないんだから」
名前もよく知らない男と女は、俺を挟んで勝手に言い合いを始めた。
「うるせえ」
「あっ…ごめん…」
「やだ。怒らないでよ。智…」
ここも…そろそろ潮時かな…
長く通い過ぎた。
飲む場所変えなきゃ…
それに、相葉ちゃんにバレたかもしれない。
メンバーに知られたら、もう通えない。
舌打ちしたい気分になりながら、ぐいっとグラスの苦い酒を煽る。
「トイレ」
店の奥にあるトイレに入って出てくると、カウンターの相葉ちゃんは、俺の座ってた席を見てた。
じっと、見たこともないような暗い目で…
カウンターの中のバーテンダーと目が合った。
ちょっと微笑むと相葉ちゃんにまたジュースを出して、何かを囁いた。
相葉ちゃんはすぐにバーテンダーに身体を向けた。
それからずっと相葉ちゃんはこちらを見ることがなかった。
もしかして…
俺がいること、気づいてる…?