第6章 ビリジアン withあにゃ
side O
海の上が好きだ
だって、なんにも考えなくてもいい。
潮風を吸い込みながら船に揺られて。
ただただ水平線の向こう側を眺めていると、頭の中が空っぽになる。
その瞬間が好きで、俺は釣りに出る。
今日が何日で、俺は誰かって考えずに済むから
「ねえ…智。あれ、相葉さんじゃない?」
左腕に居る男が、俺を見上げる。
「は…?」
男はカウンターを指差す。
「ほら…あの後ろ姿、そっくり…」
カウンターに居る痩せぎすな男。
バーテンダーと時々会話をして、よく見たらカクテルみたいなジュースを煽ってる。
「一緒に飲みたいんじゃないの?呼んであげないの?僕、話ししたいなあ…」
甘えるように俺に凭れかかると、右に座ってた女も俺に凭れかかってきた。
「あらあ…なんの相談?私も混ぜてくれない?」
「またぁ!邪魔しないでよ。今日は僕の番なんだからね?」
「だってぇ…ねえ、相葉さんも誘うの?だったら、一人余るじゃない…私も混ぜてよ」
女はくすくす笑うと、俺の耳元に口を近づけた。
「いいじゃない…たまにはスワッピングしようよ…」
「嫌」
「え?」
「俺そういう変態趣味ねえよ」
「智…」