第6章 ビリジアン withあにゃ
重厚なドアを開くと、カウンターの向こうにいるバーテンダーが軽く会釈してくれた。
「来てるよ」
近付くと、小声で言って店の奥を顎で指す。
バレないように横髪で顔を隠しながら、そっと振り向くと。
一番奥のソファに、数人の男女に囲まれて静かにグラスを傾けているあなたの姿をみつけた。
俺たちの前では決して見せない
表情の消えた
冷たささえ感じさせる佇まい
ドキリと
心臓が跳ねた
右側に座ってる女が頻りに何かを話しかけてるけど、リーダーは相槌を打つこともせず、伏し目がちにグラスを口に運んでいる。
その左腕の中には。
若くて可愛い男
今日は、あいつが相手なのかな…
今度は
ずきりと心臓が痛んだ
俺は視線を外し、カウンターの一番端っこに座った。
胸の中がヒドくモヤモヤして、強いアルコールでも喉に流し込みたい気分だったけど、車で来ちゃったし。
仕方ないから、ノンアルコールのカクテルを注文する。
タクシーで来りゃ、よかったよ…
後悔しても、後の祭りで。
静かな店内に時折響く、耳障りな甲高い笑い声を聞きながら。
いくら飲んでも酔えもしない液体を、喉に流し込んだ。