第6章 ビリジアン withあにゃ
逃げるように楽屋を出て。
地下駐車場に置いてある車に乗り込むと、エンジンをかけた。
長時間、冷たい地下に放置されていた車の中はキンキンに冷えていて。
思わず両手で自分を抱きしめると、ぶるりと身震いした。
エンジンが温まるのを待つ間、鞄の中から小さな箱を取り出す。
そこから1本引き抜き、口に咥えて。
ライターを探そうと鞄の中を漁って、はたとそういえば禁煙したんだって事を思いだした。
「…いつの間に、買ったんだろ…」
あんなに固い意思で止めた筈なのに。
仕方なく咥えたタバコを箱に戻すと、大きく息をつく。
その頃になってようやく、エアコンが大きな音を立てて温かい風を送り出してきて。
着込んでいたコートを脱ぐと、シートベルトを着け、サイドブレーキを外した。
アクセルをゆっくり踏み込むと、車は静かに夜の街へと滑り出していく。
まだ夜の浅い東京の街は人が溢れていて。
クリスマスに近いこの季節は、みんな一様に浮かれ気分で微笑んでいるように見える。
そんな人波を横目で見ながら、ところどころ渋滞している街を抜け。
銀座の近く、あまり人通りのない場所にあるコインパーキングに車を停めた。
車を降りようとして、ふと見たバックミラーには。
ひどく暗い瞳の俺が
映っている