第5章 濡羽色(ぬればいろ)
「なんで謝るの?」
「え…だって…」
「別に、謝るようなことなんて…ないよ?」
困って眉をハの字にしがながら、限界まで赤くなってる。
「俺も、気持ちよくしてもらったし?」
「う…うん…」
それに…胸の奥が温かい。
いい気分なんだ。
「…ごはん…食べる…?」
「え?」
「俺、作るからっ!」
いや、俺、朝はいつも食べないんだけど…
「いや、いいよ…」
「そんな事言わないでっ…ね?もしあれだったら、昼も夜も食ってって?」
「え?」
大野さんは俺の返事も聞かず飛び起きた。
「じゃ、顔洗ってくる!」
Tシャツにボクサーパンツだけの格好で、寝室を飛び出していった。
「な…なんなんだ…」
もそもそと床に落ちてるスエットを拾って着込んで。
「あれ」
スエットが多い…
ああ、大野さん着てないんだ。
拾ってリビングまで行くと、キッチンでガチャガチャ音がしてる。
「大野さん?」
「あっ、ニノ!顔洗う?タオルね、洗面所の横の棚に入ってるから!」
「いや…あの、これ…着たら?風邪引いちゃうよ?」
「あ…」
さっきの格好のままだよ…
でも、なぜかボーダーのエプロンつけてる。
「新妻か」
「へっ?」
「いや、なんでもない…」
大野さんは急いでエプロンを外して、俺の持ってたスエットを受け取った。