第5章 濡羽色(ぬればいろ)
「ありがとう…ニノ…」
「何いってんだよ…」
「ありがとぉ…」
「もお…お礼なんか言わないで…」
息が整うまで、顔中にキスをした。
大野さんは嬉しそうに…
微笑んでくれたんだ。
…忘れて、くれたのかな…
ティッシュで手を拭いて、汗も拭いて。
Tシャツとパンツだけ履いたら、そのまま布団を被った。
大野さんがくっついてきたから、腕枕してあげた。
「んふふ…」
なんか、すんごい嬉しそうに笑うから…俺も嬉しくなった。
「おやすみ、大野さん…」
「おやすみ…ニノ…」
出すものを出したのと…疲れていたのもあって、すぐに眠りに落ちた。
目が覚めたら、もうお日様は結構高いとこに昇ってて。
外は明るい。
晴れてるのかな。
カーテンの隙間から漏れる光を見ていたら、腕の中の大野さんがごそっと動いた。
「あ…」
うわ…
なんか、急にいろいろ思い出した…
つーか…俺、なんであんなことできたんだろ…
だって、俺も男で、大野さんも男で…
「う…わぁ…」
やったことに後悔はないけど…
やっぱり、気まずい。
だって、俺たちもう20年以上も一緒にいるのに…
「ふにゃ…」
もぞもぞする大野さんの寝顔を、ちゃんと見られなかった。