第5章 濡羽色(ぬればいろ)
大野さんにとって俺だけ平気、とか
大野さんに頼られて嬉しい、とか
大野さんに感謝されてる、とか
大野さんに俺だけ触れてる、とか
大野さんに今触れてる、とか
なんか知らないけど、どあーっと胸の奥の方からいろいろと溢れてきて…
心臓バクバクして、やばい。
なぜだかテンションまで爆上げで、やばい。
すごく…やばい…
もそもそ腕の中で動いてるおじさんが、かわいい。
かわいく、感じられるんだもん…
やばい
俺のほうがおかしいじゃないか!
それでも
そう思っても
腕の中の大野さんを離すことができなくて…
「大野さん…」
「ん…?」
顔を上げた大野さんに触りたくて。
また額にキスして、ほっぺたにキスしようとしたら…
なぜだか、唇が重なった。
「ん…」
なんで…だろ…
なんで、キスしてんだろ…
「ごめ…」
少し唇を離したら、大野さんから近づいてきて。
また唇が重なった。
ああ…
そっか。
大野さんがキス、したんだ。
唇、柔らかい。
熱い。
重なったまま動けなくなってると、大野さんの唇が開いた。
思わず
思わず、舌を突っ込んでしまった
「あ…ニノ…」
舌っ足らずな声が、俺を呼ぶ。