第5章 濡羽色(ぬればいろ)
それでも…
まだ男にやられてないだけ、ましだったのか…
でも、大野さんの心と男としてのプライドは…
きっと粉々になってしまったんだ…
「嫌じゃない…?」
「うん…」
忘れられるかな…
これで、忘れてくれるかな…
ちょっとでも気持ちいいって思うのなら、忘れられるかな…
「ニノ…」
「ん…?」
大野さんは小さく丸まって、俺の胸に凭れてきた。
俺の腰に腕を回すと、胸板に頬をつけて、ほうっと息を吐き出した。
「ニノなら…平気…」
「そっか…よかった…」
もしかして、ずっとくっつくようにしてたのが良かったのかな…
ここひと月やってきたことは、無駄じゃなかったのかもしれない。
「やっぱ俺、変になったのかな…」
「違うよ…」
多分…
俺が、女じゃなくて男で。
嫌なことしたのは、女だから…
「まっとうな反応なんだと思う…」
そういうことができないって…
”女”となんだろう。
「そう…?そうなのかな…」
「うん…」
背中に腕を回して、擦った。
「ニノ…」
「うん…?」
「ニノが居てくれて…」
ぎゅうっと抱きしめられた。
「…よかった…」
「うん…」
なんか、やばかった。