第5章 濡羽色(ぬればいろ)
「ごめん…」
慌ててシャツを脱いだけど、結構ビショビショで。
しょうがないから下に着てたTシャツも脱いだ。
ジーパンもびしょびしょで…
「風呂入ってくる…」
「うん…ごめん、ニノ…」
「ううん。あのさ、洗濯機とか貸して?」
「ああ…勝手に使って…」
大野さんが寒そうだったから、クローゼットから服を取ってきて着せた。
それからすぐ風呂に戻って、洗濯機に服をセットした。
軽くシャワーをして寝室に戻った。
「…大野さん…?」
ベッドの中にいる大野さんは顔を上げた。
「寝てないの?」
「うん…」
そっか…寝れないか…
「なんか服貸してね」
「うん」
クローゼットからスエットを借りて着込んだ。
「じゃあ俺…ソファ借りるから…」
「え…?なんで…」
「だって…」
「…ああ…大丈夫…ニノなら触られても平気…」
「ほんと…?」
「うん…」
まあ…俺、あんまり男らしくないし…
だから平気なのかな。
「じゃあ、お邪魔しますよ」
そう言って隣に滑り込んで、布団を被った。
「…おやすみ。大野さん…」
「うん…おやすみ、ニノ…」
手を探し出して、ぎゅっと握ってみた。
まだ、手は冷たかった。