第5章 濡羽色(ぬればいろ)
堪えきれず、涙が一粒大野さんの手に落ちた。
「ニノ…ごめん…」
「なんで…あなたが、謝ることなんかない…」
嗚咽まで込み上げてきて。
うまくしゃべることができない。
「ごめんね…大野さん…」
ひとりで…辛かったね…
こんなこと、誰にも言えないもん…
今までひとりで、ずっと耐えてきたんだ…
「俺の…不注意だから…」
なんで…
責められないよ…
「それでも…こんなことになるなんて、想像できないでしょうよ…」
そりゃ、スキャンダルには最大限気をつけているけどさ。
こんなこと、不注意って責められるか?
だって、大野さんは男だ。
男なんだから…
芸能人だからって…何しても訴えられないって。
足元見やがったんだ。
「もう、いいから…」
そんな汚い奴らからつけられた傷…
ひとりで抱え込まなくていい。
「大野さん…」
「ニノ…」
俺に分けてよ…
あなたの苦しいの…俺に分けてよ…
「ごめん…ニノ…」
少し握った手に力が入って。
その手を引き寄せて、身体を起こした。
はらりとバスローブが大野さんの肩から落ちていった。
「もう…ひとりで抱えないで…?」
「ニノ…」
「一緒に…居るから…」
そっと腕を回して、大野さんの身体を抱きしめた。
「冷た…」
「あ…」
俺の服、ビショビショだった…