• テキストサイズ

カラフルⅤ【気象系BL小説】

第5章 濡羽色(ぬればいろ)


そのまま寝室に大野さんを運んで、ベッドに寝かせた。
まだ髪とか濡れてたから、バスタオルで拭いて。

その間、大野さんは放心してされるがままになってた。

「…大丈夫…?」

身体、冷えちゃったな…どうしよう…
お布団を掛けて、ベッド際に座ると頬に触れた。
泣きはらした目を俺に向けて、大野さんは苦しそうな顔をした。

「ごめん…ニノ…」
「うん…」
「俺…」
「うん…?」
「大阪で…」
「…うん…」

布団から手が出てきて、俺の手を握りしめた。
手が、冷たい。

「やられたんだ…無理やり…」
「…え…?」

ぎゅっと口を引き結んで、もう大野さんは何も言わなかった。

いや…
言えなかったんだ。

「大野さん…」

やられたって…そういうこと、だよね…?

だから…言えなかったんだ
だから…触れられたくなかったんだ

握った手にぎゅっと力が入って、頭の中をいろんな映像が駆け巡っていった。

もう何を言ったらいいか、どうしたらいいかなんてわからない。

この人が、誰にも本当のことを言えず、一人で耐えてたって事実が、胸をいっぱいにして。

泣いちゃいけない…そう思うのに、涙が出た。

「…ごめ…」

泣きたいのは、大野さんなのに。

/ 514ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp