第5章 濡羽色(ぬればいろ)
なんか…様子が変だった…
「あ…」
お酒、入ってるからかな…
なんか、思い出しちゃったのかな。
15分くらいして、様子を見に行った。
いつも大野さんは熱いのが苦手だからカラスの行水で、早く上がってくるから…ちょっと遅いなって思ったんだよね。
脱衣所の引き戸をノックしてみたけど、返事はない。
「大野さん、入るよ?」
声をかけてから中に入ったら、やっぱり居ない。
浴室のすりガラスを見てみたけど、中で動いてる気配はない。
「大野さん?」
声を掛けてみたけど、返事はない。
のぼせてるのか?
そう思って、慌てて浴室のドアを開けた。
「大野さんっ!?」
大野さんは浴槽に浸かってた。
浸かってたんだけど…縁に寄りかかって突っ伏すような格好になってた。
「どうしたの!?のぼせた!?」
慌てて服を来たまま飛び込んで。
大野さんの身体を起こした。
「ニノ…」
濡れた前髪の間から、大野さんの目が開いてるのが見えた。
「今、上げるから…」
なんとか踏ん張って大野さんを浴槽から引っ張り出した。
濡れるのも構わず抱き上げると、脱衣所に出た。
「ちょっと待っててね」
脱衣所のマットの上に座らせると、台所に向かった。