第5章 濡羽色(ぬればいろ)
だらだらと飲んで、コンサートとか仕事のこと話してたけど、大野さんが眠そうにしてたから、風呂に入ることにした。
泊まりにきたんだからってんで、俺が風呂を洗うことにした。
「いいのに…そんなことしなくて…」
心配なのかなんなのか。
風呂を洗ってる背後で、ドアをちょっとだけ開けて中を見てる。
「水、かかるよ?」
「うん…」
それでも、大野さんはそこを動かなかった。
洗剤で洗い終わって最後に流してると、案の定大野さんに掛かっちゃった。
「あー!もう!ごめん!」
「いい…大丈夫…」
「このまんま入る?」
「うん…」
そのまま給湯ボタンを押して、お湯を浴槽に入れた。
脱衣所に出ると、大野さんがぼけっとこっちを見て立っていた。
「…どうしたの?酔っ払った?」
でも、あんまり飲んでないし…
大野さんはお酒が強いから、あんくらいじゃとてもじゃないけど酔えないはず。
「なんでもない…」
ぼーっと俺から目を逸らすと、床を見てる。
「ちょっと…大丈夫…?」
肩に手を掛けると、少しびくりとした。
「大野さん…?」
「大丈夫…」
いきなり服を脱ぎだしたから、俺は脱衣所を出た。