第5章 濡羽色(ぬればいろ)
「腰がいてぇ…」
「もお…だったら家帰れよな…」
「大野さん、揉んで」
「…なんで俺が」
「ああっ…痛いなあ…痛いっ…」
「わあったよ…」
しぶしぶ、ソファを占拠する俺に跨ってきた。
「右ね、右…」
「はいはい…」
さすさすと擦るように大野さんはマッサージしてくれた。
「もっと強く…」
「おん…」
ぐりぐりとさすってくれるけど、この人あんまりマッサージが得意な人じゃないから、人にもどうしていいのかわからないみたい。
「やめよっか…」
「うん…」
「ありがとね」
「うん…」
ちょっとしょぼんとしながら、コンビニで買ったものを袋から出した。
「ビール飲む?」
「あ、うん」
これからシャワーして寝るだけだから、もう晩酌タイムみたい。
ビールの缶とおつまみを出して、テーブルに並べた。
ソファから起き上がると、床に座る大野さんの隣に腰を下ろした。
「じゃあ、乾杯」
「乾杯」
スマホにうるさいほど着信が入ってる。
ちらっと見たら大野さんのもだった。
「あー…」
相葉さんだった。
なんとなく、ふたりで目を合わせて笑った。
そのままスマホを見なかったことにした。
「するめたべる?」
「食べる」