第5章 濡羽色(ぬればいろ)
結局、その日はなんにも話しては貰えなかった。
でもひたすら俺は大野さんの身体に触れていた。
抱きしめたり、くっついたり。
大野さんは嫌がる素振りもなく、身体を固くすることもなくそれを受け入れてくれたように思う。
こんなことしたからって、何になるかわからないけど。
でも、必要なことのような気がして…
口ではブツブツ言ってるけど、大野さんが求めてるような気がして…
それからは前以上に、大野さんとスキンシップすることが増えた。
そんな中、札幌が終わって、そのあとの修正リハが急遽入ったりして、バタバタした日が過ぎていった。
次の週に、生放送の音楽番組があるから、その選曲やリハも並行して行われる。
世間では三連休とか言ってたけど、俺たちにはあまり関係がなかった。
「じゃあ、お先…」
リハーサルをしてるスタジオで、深夜に解散になったその日も、大野さん家に押しかけることにした。
「なぁんでついてくるんだよ」
「今日、大野さんち泊まる」
「はあ!?なんで勝手に決めてんだよ!?」
あのあと、大野さんからなにも聞き出せてはいなかったけど…
みんな、様子を気にしてるのはひしひしと伝わってくる。
大野さんもそれを感じてて…すごく居心地が悪そう。