第5章 濡羽色(ぬればいろ)
宅配が届くまでの間、大野さんと向き合った。
最初は、ぜんぜんこっちを見てくれなくて。
ソファの上で、強引に顔をこっちに向けさせた。
「痛い…」
「人が話してるのに、ちゃんとこっち見なさいよ」
「……」
ぶすっとして渋々俺のほうに身体を向けた。
少しほっとして、大野さんのほっぺたをぷにっと掴んだ。
「…なんだよ…」
「なんでもない…」
さっき見た、儚いようなあの顔…
もう、あんな顔させちゃだめだって思った。
だって怖い
大野さんが消えちゃったらと思ったら、泣きそうになる
「平気…?」
「なにが」
「俺が触ってても平気…?」
「ああ…今、酒入ってないし…」
いつも、スキンシップは多いほうだし…
嫌がる素振りなんか、見せたことなかった。
だから、今まで気づかなかったんだけど…
「じゃあこれは?」
いきなり、大野さんを抱きしめてみた。
「…平気…?」
「別に…ニノなら平気…」
「ほんと…?」
もぞっと俺の腕の中で動いた。
「…うん…平気…」
「そっか」
背中を擦るように触ってみたけど、嫌がらない。
さっきみたいに、身体に力がはいることもなかった。
なんか、俺に預けきってる。
そんな感じがした。