第5章 濡羽色(ぬればいろ)
リビングに勝手に入ると、大野さんもあとに続いてきた。
「お昼ご飯、食べる?」
「え?」
「一緒に食べようよ」
「いや…俺、食欲ない…」
そう言ってるけど、強引に宅配のアプリを開いた。
「何食べる?」
「オイ」
「中華?和食もあるよ?」
「だから聞けって」
「おかゆがいい?おかゆにしよっか」
「ニーノー…」
どすっと俺の隣に座った。
「忘れ物は?」
「んー…なんだったかな」
「…オイ…」
中華の宅配のページで、おかゆを二個頼んだ。
「このアプリ便利でさぁ…」
届けに来てくれる人をGPSで追跡できるやつ。
これ見てるのが結構すき。
「帰れよ」
「やだ」
「…大丈夫だから…」
「俺が帰りたくないんだもん」
「ニノ…」
弱りきってるけど、絶対帰らないんだから。
「どうせ家に帰っても、することないし…大野さんだって暇でしょ?」
「暇じゃねえよ。帰れよ」
「やだ」
ムスッとして、膝を抱え込んだ。
「あんな話して悪かったよ…大丈夫だから、家帰って休めよ…」
「いいじゃん。休みの日をどう使おうと、俺の勝手でしょ?」
「もお…帰れよ…」
「住所」
「え?」
「住所教えて。入力しなきゃ」
宅配アプリの入力画面を見せると、諦めたようにため息を付いた。