第5章 濡羽色(ぬればいろ)
お昼すぎまでそうやって過ごして、大野さんの家を後にした。
みんなそれぞれ沈思してたけど、いくら考えても俺たちじゃどうにもならない問題で。
こればっかりは専門家に診せて、治療するしかない。
殴られたことなんてないけど…
集団で追いかけられたり、暴力の恐怖はわかる。
若い頃、いじめに遭っていたから。
でも…
大野さんは実際に殴られて、追いかけられて。
暴言だって吐かれたんだろう。
それが、今も症状が出るトラウマになっている。
「ニノ、先いっていいよ」
大野さんちの前で解散して、それぞれ家の方向までちょっと出てタクシーを捕まえた。
相葉さんと俺は、方向が一緒だったから一緒に居たんだけど…
「ニノ…?」
ずっと…
一人で耐えてきたんだろうか。
「どうしたの?」
ずっと、あんな状態で…
「あのさ…」
「うん?」
「本当に、あれだけだと思う…?」
「え…?」
相葉さんはタクシーを止めたままの姿勢でこっちを振り返った。
「おーちゃんのこと?」
「うん…」
たかが喧嘩だ。
追いかけられて、怖い思いをしたんだから、トラウマになってもしょうがないとは思う。
でも…本当にそれだけだったんだろうか。