第5章 濡羽色(ぬればいろ)
「…お、俺、出かけなきゃ…」
「だめだよ」
「え…?」
「ちゃんと話すまで、どこにも行かさないから」
そう言ったら、あからさまに不貞腐れた顔をした。
「なにを…」
「智くん。昨日の続きだよ」
翔ちゃんが言うと、今度は取り乱したりはしなかったけど。
でもより一層頑固な顔をして黙り込んだ。
「…ま、言わなくてもいいけどね」
「え。ちょっと、何言うの。相葉さん…」
「おーちゃんが言わないなら、俺たち交代で泊まり込むからね」
「は?」
「ああ…いい案だな…交代でゲロるまで、大野さんに張り付くのか」
潤くんがにたりと笑った。
「ああ…まあ、そういうことなら、ね」
翔ちゃんも笑って大野さんを見た。
「ぷ…ぷらいべーと…」
「まあ、我々のプライベートよりも大事な問題だからねえ…」
「はあっ?何いってんだよ、俺の…」
「…自分のプライベート犠牲にしてでも、あんたの話聞くって言ってんだよ?みんな…」
わかってないはずない。
なのに、抵抗しようとするのは…
絶対に言いたくないんだ。
それほどのことが、大野さんに起こった。
「ほっといてくれよ…」
「…そうできると思ってるの?」
そんなこと、できるわけないんだ。