第5章 濡羽色(ぬればいろ)
「先、始めといて」
潤くんはこっちに向き直ると、ひとつ頷いてからリビングを出ていった。
パタンとドアの閉まる音がして、俺と相葉さんは目を合わせた。
「じゃ、じゃあ、始めよっか」
大野さんにグラスを持たせて、ビールで乾杯した。
「じゃあ二次会スタートってことで…」
乾杯とグラスを目の高さまで持ち上げると、ぐびっと飲み干した。
大野さんも口をつけると、一気に流し込んだ。
「…あんまりいっぱい飲んじゃだめよ?」
「うん…」
まだ顔色は悪いままで…
相葉さんとふたりで大野さんを挟んで、チラチラ見ながら飲んでいた。
しばらくすると、リビングのドアが開いた。
翔ちゃんと潤くんが、一緒に入ってきた。
ふたりとも、神妙な顔してる。
「…どうしたの…?」
「いや…」
ふたりは、テーブルを挟んで向かい側の床に座ると、大野さんを見た。
「智くん…」
翔ちゃんの表情が暗い。
「…何があったのか…言ってくれない…?」
潤くんが小さな声でうつむきながら言った。
その瞬間、大野さんがびくりと震えた。
「…聞いたの…?」
「おーちゃん…」
「聞いたのっ!?」
いきなり立ち上がったかと思ったら、動きが止まって。
「大野さんっ…」
突然崩れ落ちるように倒れ込んだ。