第5章 濡羽色(ぬればいろ)
緊張が緩んだのか、大野さんが少しだけ俺に寄りかかってきた。
「ごめん…ニノ…」
「ううん…」
なんであんなことしたのか…
この人が教える気にならないと聞き出せないから、聞けなかった。
こういうときは、こうやって何も言わず寄り添っていることしかできない。
もどかしいけど、しょうがない…
背中を擦っていた手を止めて、肩に腕を回した。
さっき、潤くんが肩を触って嫌がった。
もしかして痛めてるのかもと思って…
でも、今度はもう振り払うようなことはしなかった。
「大野さん、冷蔵庫に入ってるお酒出してもいい?」
潤くんがキッチンから声を掛けると、頷いた。
「棚にも入ってるから…」
「わかった。漁らせてもらうね」
しばらくすると、お皿に乾き物を載せて相葉さんが持ってきて。
大野さんの顔を覗き込むと、ちょっと笑った。
それを見て、大野さんも少し笑うと、ポンポンと頭をなでていった。
「今、お酒持ってくるからね」
ふたりが動いてくれて、リビングのテーブルの上には、酒と少しの食べ物が並んだ。
「あれ、翔ちゃんは?」
「なんか、電話するとこあるとか言ってた」
「そっか…」
潤くんがリビングのドアを開けて、様子をうかがってる。