第5章 濡羽色(ぬればいろ)
それから、忙しかった年末も過ぎて、紅白も無事に終えることができた。
俺は4月期の連続ドラマがあったり、撮り終わってた先輩との映画のプロモーションがあったりと、忙しい一年を過ごした。
でも…
去年の年末に確認した大野さんのスケジュールは、埋まることのないまま。
「ねえ…あんた、何やってんの…?」
「んー?」
コンサートツアーのリハーサルに本格的に入る時期、スタジオで振りつけを思い出す作業に入っていた。
たまたまその日は、俺と大野さんしか居なかったんだ。
だから、今まで謎になってたスケジュールのこと、聞いてみたんだよね。
「なんでこんなスケジュール、すっかすかなのよ」
「ああ…」
大野さんはリノリウムの床にあぐらをかいたまま、後ろにごろんとひっくり返った。
「別に……俺、おまえと違って仕事ないから」
「はあ?何言ってんのよ」
もしかして…干されてるのかな。
なんか、やらかしたとか?
でもそうだったら、俺たちにも通達があるはずだ。
懲罰なんだから、連帯責任で俺たちにもペナルティーがあるはずだし…
「なんか、あったわけ…?」
「別に……」
そっけなくいうと、俺に背中を向けてしまった。