第4章 バッカス
「あの…カード使えますよね…?」
ちらちらと窓や車内を見ながら聞いてる。
そういや、乗ったタクシーは見たことない色のやつだった。
「あー…ごめんねぇ…うち、使えないのよ」
おじいちゃん運転手は、ちらちら後ろを見ながら謝ってきた。
出た!今どきカード使えない、個タクだ!
「えっ…」
ちょっと翔ちゃんは絶句して、慌てて財布を取り出した。
「やばい…現金ない…」
「えっ…」
大野さんも俺も慌てて財布を出した。
「あ…」
「俺も…」
なんとか3人合わせて出てきたのは、3000円…
タクシーのメーターは、2800円を指していた。
「こ、ここで降ります…」
いつもだったら、多めに現金は持ってるんだけど。
こんなときに限って、忙しくて銀行に行けてなかったから財布にお金入ってなかった…
そりゃ、タクシーで帰るつもりだったけどさ。
普通のタクシー、カード使えるし…
ちょうど俺の家の近くまで来てたから、俺はなんとか帰れるけど…
「どうする?大野さん、翔ちゃん」
「タクシー…捕まるかな…」
もう結構な深夜になってて。
道行くタクシーはどれも賃走中や回送の表示。
「うち、くる?」
「ああ…」
とりあえずタクシーを呼ぶにしても待ちそうだったから、家に入ってもらうことにした。