第3章 アリストテレス
全く…潤といると、ペース崩されて敵わねえな…
「全くもうよう…」
「なんだよ…さっきから…」
「あんでもねえよ。じゃあ、俺帰っからな」
「あー。送迎車一台しかねえからな。一緒に送る」
「えー」
「えーじゃねえだろ。贅沢言うな」
チーフにごつっとげんこつ食らって、俺たちはリハーサルスタジオを後にした。
ワゴンに乗り込むと、相変わらず潤は前の席を陣取って。
俺は、5人で乗るときの定位置についた。
後ろから二番目の運転席側の窓側。
そこからはなんの会話もなく。
イヤホンをしながら、ただ家に着くまでの間ニュースを読み漁る。
もうすぐ俺の家に着こうというとき…
急にがくんと車が停まった。
「なんだ?」
イヤホンを外して前を見たら、チーフがちょっと焦ってる様子が見えた。
「なに?どうしたの?」
潤も立ち上がって運転席を覗き込んでる。
「いや…ちょっと、エンジンが急に停まって…」
「ええっ…」
俺も前の方まで見に行ったんだけど、道路の真ん中でまじで立ち往生したままエンジンが掛からなくなってた。
「参った…故障だ…JAF呼ばなきゃ…」
チーフが電話を掛けている間、俺と潤で背後の車の誘導から、三角表示板とか用意した。