第3章 アリストテレス
フロートとは、コンサート中盤から後半に登場するでっかい乗り物で。
よくアリーナ外周を回ってるでっかい櫓みたいなやつだ。
「えっ…フロートを?」
また潤の顔がキラキラしだした。
「フロートなら最初から格納スペース考えて取ってあるだろ?それを利用してさ…」
なんて言ってたら、俺と潤の話はどんどん突拍子もないとこまで飛んでいって…
いつもそうだ。
なんか、演出の潤と喋ってると、日頃頭の硬い俺までなんかいろいろ出てくるんだよな…
「ストーップ!ストップストップ!」
チーフの制止が入るまでそれは続いてしまう。
「んなことできるわきゃないだろ…ドームの天井に穴開ける気かおまえら…」
「あ…」
「こりゃ…失礼した…」
ごほんっと咳払いして潤の顔をみると、ちょっと照れたように笑った。
「もお…翔くんと話してると、どんどんどっか行っちゃう」
にっこり笑った笑顔は、少年の頃のように真っ白で…
「でた…天使…」
「あ?」
怪訝な顔をされてしまった。
「んあっ!ぬあっ!なんでもねえよっ!」
「わっ…また…なんで急にでっかい声だすんだよ!」
「す、すまない…」
もう深夜だから、微妙に髭面の男に向かって天使とは何事だ、俺っ!