第3章 アリストテレス
俺と潤のマネは今日はここには来てなくて。
チーフだけが来てた。
あとはコンサートスタッフの部門責任者たち。
その人達も潤の様子を伺ってる。
もう長年一緒にやってきてる人たちだから、わかってんだよね。
総合演出の松本潤の思考癖。
「あー…ちょっと、まだまとまってないみたいなんで、皆さん…」
そう言って、手を出口ドアの方に向けたら、スタッフさんたちはホッとした顔になった。
ここんとこ、朝までコースが続いてたから、早く帰りたかったんだろう。
「じゃあすいません…翔くん、お先…」
「櫻井さん、よろしくおねがいします…」
そう言いながら、スタッフさんたちも帰っていった。
「ま、気の済むまでやらせてやれ」
チーフだけが苦笑いして残った。
「ああ。ま、つきあうよ」
「すまんな。櫻井」
チーフはしばらくすると、夜食を買ってくると部屋を出ていった。
打ち合わせの部屋には、俺と潤だけ。
でも潤は、書類とにらめっこしてずーっと無言。
舞台演出の世界に、没入してしまってんだ。
そんな潤を見るでもなく、俺はタブレットを操作してニュースを眺めたりしてた。
いつか、潤が何か意見を求めるから、それに答えるために待機してるってわけ。