第1章 バニラ
「おおのさーん…」
「お、おお…」
もうぐしゃぐしゃに泣いてるから、どうすることもできなかった。
「わかったから…」
しがみついてくる細い肩を抱きしめて、泣き止むまで待つしかなかった。
しばらく泣いて、ニノはやっと俺から離れた。
「ごめん…」
「いや、いい…」
テーブルの上にあるティッシュボックスを取ってやると、一枚とってぶびーっと鼻をかんだ。
「ううう…どうしよう…俺、どうなるのかなあ…」
もう鼻の頭まで真っ赤で。
これがあの渡海を演ってた役者かと思うほどで。
いや、だいぶ若返っちゃってんだけどさ。
「昔、読んだ小説で…おばあさんがおんなじようなことになってさ…このままどんどん若返っていって…」
ぐずぐずとなにやら言っている。
「…そんでそのまま赤ちゃんになっていなくなっちゃうってはなし…思い出した…」
「お、おいっ…何バカなこと言ってんだよ!?」
「だってぇっ…」
また泣き出して…
「わかったから…ちょっと落ち着け?な?飯食ったのか?」
「食べてない…」
「わかった。なんか作るから…」
「酒…」
「は?」
「酒飲みたい…この姿じゃ買えなくて…」
「何バカなこと言ってんだよ!?」