第1章 バニラ
「めいわく…だった…?」
涙声にぎょっとした。
空になったマグカップを握りしめて、俯いてる。
「ち、ちがーわっ!俺、頭悪いからっ…」
「でもっ…」
顔を上げて、まっすぐに俺を見た。
目が赤くて、潤んでる。
ああ…懐かしいなって思ってしまった。
スタジオの隅で…こんな顔して泣いてたこと、あったなって。
こんな時なのに、思い出してしまった。
「こんな俺の姿見ても、俺だってちゃんとわかってくれるの…大野さんしかいないと思った…」
「ニノ…」
何いってんだよ…
「こんな姿って言ったって、ちゃんとどっからどう見てもニノだろうが…」
「だからあ…俺だって信じられないのに、大野さんだったら受け入れてくれると思ったんだもん…」
きゅっと口を引き結んで、ぷるぷる子犬みたいに震えだした。
「俺は、一体おまえん中でどういうキャラなんだ…」
「だってぇ…」
ついに泣き出してしまった。
「なくなよぉ…」
「だってぇ…」
まあ、そうだよな。
泣きたいよな…
俯いてる頭に手を載せて、なでなでしてみた。
「う…うう…」
ますます泣いて、どうしていいかわからなくなった。
ティッシュを取ろうと身を捩ったら、どすんとニノが抱きついてきた。