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猫、拾いました。【一松長編】

第2章 雨上がりの空



その日の仕事は捗った。驚く程順調に仕事が捗って定時上がりが出来た。いつ振りだろう、明日は休みだからお酒でも買って帰ろうかな、なんて考えると一松くんの事が頭を過る。


ちゃんと家に帰れただろうか、またゴミ捨て場で寝てたりして。…非日常的な事が起こったものだから、家に帰るのがなんだか寂しい気もする。


スーパーで食材と梅酒を買い、帰路を進むと見えてくるマンション。不思議な事に電気が付いている気がする。…あれ、付けっ放しにしちゃったっけ。玄関前の鉢植えを確認するも、鍵は置かれて居ない。…もしかして、一松くん、まだ居たりするのかな。


疑問を浮かべつつも鍵を回し部屋に入ると、テーブル前で正座をしている彼の姿。昨晩の様に頬が赤らんでいる事はない。寧ろ、何処か青白い様な…。


「ただいま…?」
「……っ、お、…おお、おかえり…。」
「…ぷ、…だから、吃り過ぎだって。」


まだ家に居た。ただいまに返事が返ってきた。不思議な温かさを胸に抱えながら寝室で部屋着に着替えると畏る彼の前に座り込む。


「んーと、…帰らなかったんだね。」
「…うっ、…その、…帰れない…から。」
「そうなの?…まさか、家出…?」


俯き気味の彼が辿々しく、それでも確かに家を出た経緯を話してくれた。どうやら、働いてないらしい。それは行く当ても無いだろうなあ…。


「だから、…その、あんたの家に置いて欲しい。…もっ、勿論タダでとは言わない。…家事とか雑用とか、…なんなら!飼い猫もするから…!」


目の前で猫耳と尻尾を生やして頭を下げる彼。…え、待って視覚の暴力が強過ぎて他の事が頭に入ってこない。この人…、人間じゃないの?飼い猫…?


「…飼うってどう言う事?」
「それは、…その、見ての通りコレが自由自在に出せるし、家事も出来る猫なんてお得じゃない…?」


精一杯の売り文句を言ったぞ、と言う表情の彼に双眸瞬かせるのをやめられない私は、取り敢えず衝動を抑えられず彼の耳裏を撫でる。瞬時に蕩けて喉を鳴らす姿に、感動が止まらない。


「…飼う!一松くん!君、此処に居て良いよ!」
「…え、ほんと?後から嘘でしたー、とか言わない…?」


自分から振っておきながら疑わしそうにする彼に、数回頷くと「まじか…。」と呟かれた。



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