第8章 転機
「グルルルル…ッ!」
「厄魔だ…あの女の子を狙っているのか!?行くぞ、佐助!」
「おう!」
数にしては少ないが、あの倒れている子を狙っているのは確かだった。俺は槍を取り、佐助も小刀を携える。今は兎に角厄魔を追い払うのが先だ!
「はぁっ!」
「グオォオ!!」
けたたましい悲鳴を上げる厄魔達を佐助と共に一体ずつ確実に仕留めていく。勿論、彼女へ危害の無いように。ほんの少ない数の厄魔達は、直ぐに討伐を終えることが出来た。
改めて倒れている女の子に俺と佐助は駆け寄った。呼吸が荒い、足に怪我も有る。
「幸村、この子怪我してるぞ。しかも身体はずぶ濡れだし、熱もある。」
「…女の子がこんな深い森の中で、どんな経緯があったのかは分からないが…佐助、彼女を城に連れて帰る。このままじゃ危ない。」
「そうだな。情報収集にはまた来ようぜ。」
…それにしても、見たことが無いくらい、綺麗な子だ。あと、足から流れる血の匂いが酷く甘い。……もしかしてこの子が、豊臣秀吉が籠絡している…?いや、それならきっとこんなところには居ないな。
俺は懐から取り出した包帯を彼女の太腿へ巻き付け、しっかりと抱えたまま馬に乗り佐助と共に帰路へ着いた。
____
次回から暫く真田軍での生活になります。