第8章 転機
「うぅ…。」
目を覚ますと、見慣れた天井が目に映った。ここは…私の部屋?昨日は確か、長秀さんに追われて…利家に血を吸われて…最終的に連れて帰って貰ったんだっけ。途中からあまり記憶がはっきりしない。少しだけ頭もボーッとする。
頭を抑えて昨日の出来事について思い返していると、不意に襖の外から声が聞こえた。
「ちゃん、入ってもいい?」
「あ……うん、どうぞ。」
入って来たのは半兵衛くんと官兵衛さんだった。私を見るなり少し心配そうに半兵衛くんが顔をのぞき込ませてくる。
「もうお昼だよ〜。昼餉持ってきたから、ここで食べて。昨日、僕達と合流してからもずっと眠ってたみたいだけど…大丈夫?」
「うん、ありがとう。ちょっと疲れちゃってたみたい。」
「あなたは女性だからな。余り無理はしすぎない方がいい。」
「官兵衛さんもありがとうございます。それで…2人が部屋に来た理由は…?」
「そうそう、昨日の事なんだけどね…。」
持ってきてもらった昼餉を食べながら半兵衛くんの話を聞くと、昨日私と利家が逃げ回っている間に秀吉さんがなんと織田信長の城へ忍び込み姫神子様に関する事が書かれた巻物を盗んで来たらしい。この人も本当に無茶をする人だ…。
その巻物によると、今より遥か昔、姫神子様が各地の大名達に送った【神器】というものが豊臣領の神社にあるという事がわかった。そこに、姫神子様も降臨した事があるという。
「その神器ってやつが姫神子様の手掛かりになるかもしれないって事だね。」
「そう!で、今日これから官兵衛と一緒に探しに行くんだけど…ちゃんは休んでもらった方がいいかもしれないね〜。」
「えっ!?大丈夫、私も行くよ!」
「だが、疲労が溜まっているのだろう?最近忙しかったし、あなたは少し休め。」
「平気です、神器探しも私の都合だし…2人に行かせるのは申し訳ないです。準備するので待っててもらってもいいですか?」
「本当に平気?ちょっとほっぺ赤い気がするけど…。」
「あったかいお味噌汁飲んだからだって!私は元気だよ?」
そう言って笑うと、半兵衛くんと官兵衛さんは渋々頷いてくれる。部屋を出て行くついでに、官兵衛さんが食べ終わった昼餉もさげてくれた。優しい。