第7章 突撃
「おい、速く走れ!捕まっちまうぞ!!」
「もー!誰のせいだよー!」
「こっちだ!早く来い!」
少し先を走る利家が厳しい顔つきで振り返る。私たちは暗い森の中、織田の軍勢に追われていた。何故こんなことになってしまったかというと事の発端はほんの数時間前の話である。
昨日、半兵衛くんの提案通り物売り等に変装した私達はそれぞれバラバラになって織田の領地に忍び込んだ。私は利家と一緒に行動する事になり、いつぞやに拾った刀を護身用に持って行こうとしたが流石に女が刀を持つのは…という事になって利家に預け、ただの農民として隣を歩いていたのけれどひょんなことから領の人間と利家が揉め、それが運悪く森蘭丸という武将に見つかってしまい今に至る。
「この先だ!追え!!」
「……ちっ、織田の兵士め。次から次に来やがるな。」
「何処か隠れる…?」
「めんどくせぇからぶっ飛ばそうぜ!」
「そんな事したら余計ややこしくなるでしょうが!」
ここは織田の領地。そんな所で狼藉を働けば最悪戦になりかねない。さすがの私でもそれだけは分かるようになって来た。めんどくさそうにため息をつく利家に手を取られる。誰のせいでこんなことになってると思ってるんだ…!
「じゃあ、しょうがねえ……とりあえずは逃げの一手だ!オレが引っ張ってやる!」
「え、まだスピード上げるの…うわ、利家!!」
ぐんっ、と手を引っ張られ足元の悪い森を走り続ける。追ってくる織田軍は勿論刀を携えていて、捕まれば死ぬ事は明白だった。弱音吐いてる暇はないって事ね…。全く、織田軍に関わると悪い事しか起きないなぁ…!
手を引かれて走り続け、追っ手をまき河原に出たところで1度足を止めた。利家は川元の方を指さす。つられて顔を向けるとそこには…村があった。
「おい、見ろよ。あの村。」
「本当だ。匿ってもらえるかな…。」
「そりゃ無理だな。良く見ろ、村の入口に見張りっぽいのが立ってるだろ?あれは多分、盗賊の隠れ里なんだよ。」
「え!?全然見えない…!」
改めて目を凝らしてみたが、距離もあるし月明かりだけでは到底わからなかった。三成さんの時もそうだったけど、本当に夜目が利くんだな。
「盗賊の村なら仕方ないね。別の場所探そうか…。」
「ん?いや、今日はあの村に泊まるぞ。」
「えぇ!?盗賊の村なんでしょ!?」