第6章 逢引
「まぁ、喜んでくれたなら連れてきた甲斐があった!ちょっと座ろうか。」
誰も居ない湖の近くにと一緒に座る。直ぐには仰向けに寝転び空に瞬く星を見上げていた。そして徐にゆっくりと手を伸ばし月を指差す。
「…月、綺麗だね。」
「そうだね。今日は満月だ。」
「吸血鬼って満月になると強くなったりするの?」
「そういうのは無いなぁ。俺達が強くなるとしたらあんたの血、だけだね。」
「にんにく嫌い?」
「俺は好きだよ?」
「…やっぱり私が知ってる吸血鬼と違う。」
「の世界じゃ吸血鬼は満月に強くなって、にんにくが嫌いなの?」
「うん、まぁ…そもそも吸血鬼自体架空の生物だから正しいとは元々言いきれないんだけどね。」
「ふーん…実際吸血鬼に噛まれた感想は?」
上から覆い被さるように顔を覗き込むとは数秒の間を置いて、顔を真っ赤に染め上げた。その意味が分からず俺は目を丸める。照れる様な事なのかな…?
「と…特にない。」
「嘘、顔真っ赤だけど?」
「赤くない!」
「赤い、林檎みたい。そんな恥ずかしいものなの?」
問い詰めたところ、ふいっと顔を逸らされてしまった。そういう態度が男の加虐心を擽るってこと、分かってないね?
俺はの身体の上に跨り両手を顔の横へ置いた。驚いた彼女は真っ赤に染まったままの顔を向けて来る。
「ど、退いて!」
「教えてくれるまで退かないよ。」
「意地悪…!」
「が煽るから。」
「煽ってない…。」
「早く教えてくれないと、このままだよ?」
あぁ、もう泣きそうな顔してる。しかもちょっと悔しそうときた。逆効果なんだよなぁ…。は視線を逡巡させ、言葉を選びながら小さく唇を開く。
「……痛くて、身体が痺れて、ふわふわするの。…だから噛まれるのは怖い。」
「…そう、なんだ。」
震える声で紡がれる言葉に、ゾクリと背筋が震えた。何だそれ…凄い、興奮する。無意識の内に舌舐めずりをすると、は噛まれると思ったのか肩を押し返して来る。
「答えたんだから、退いて!」
「嫌だね、本当にそうなるのか試させてよ。」
「え、話が違う!」
「が悪いんだよ、誘うような事を言うから…。」