第5章 計画
「緊急事態だったんだから仕方ないでしょ?」
「まぁね。それで民が救われたのなら文句は無いし。でもさ…は自覚ないかもしれないけどあんたの血ってこんな酒とは比べ物にならないぐらい美味しいんだよ。隣にいるだけで、いい匂い。」
「ひゃ、ちょっと…人前で辞めて!」
悪戯に鼻先を耳元に埋め熱い吐息が耳孔へ吹き込まれぞわっと背筋が粟立つ。すぐに耳を隠し彼を睨むもさほど気にしない様子で寧ろ意地悪く口角を吊り上げた。
「へぇ、人前じゃなかったらいいの?」
「そ…そうじゃない!」
「照れちゃって〜!」
「…もう!秀吉さん、酔ってるよね!?」
「どうだろうね?」
「……夜風当たってきます。」
「俺も行くよ。」
「1人で大丈夫!」
廊下に出て足を進め、縁側へ腰をかける。優しく吹く風が火照った頬に心地良い。
この世界に来て、随分時間が経ったな。賊の1件も落ち着いたし、そろそろ姫神子様を探しに行けるといいんだけれど…。
そんな事を考えながら外を眺めていると不意に茂みが揺れた。何か居る…!?そう思って身構えたところ、茂みから私の方へ飛び込んで来たのは見覚えのある茶釜だった。
「さ〜ん!」
「イマリ!」
飛び着いてきたイマリを抱き締めた。泣きそうな彼の頭を優しく撫でると、すんすんと鼻を鳴らす。
「すみません、ボク…1人で姫神子様の情報を探していたんですけど…何も手掛かりがまだ見つからなくて…。」
「ううん、探してくれてありがとう!」
「さんは豊臣軍に上手く馴染んでるみたいですね?安心しました!」
「お陰様で上手くやってるよ。明日から私も姫神子様の情報を探しに行こうと思ってたの。」
「1人で行かれるんですか…?」
「うーん…多分秀吉さんに止められるだろうから、誰かと一緒に行く事になるかな。秀吉さんには、異世界から来たこと話したの。その上で協力してくれるって、言ってたから。」
「そうでしたか!良かった!それではボクも、さんに負けないように引き続き姫神子様を探して来ます!さんもお気を付けて!」
「うん、イマリも無茶しないでね?」
「はい!」
大きく頷くと、イマリはまた大きな尻尾を揺らして行ってしまった。明日からは姫神子様を本格的に探し始めよう。そして、自分の元いた世界へ帰るんだ。