第4章 日常
朝起きると清々しい程に晴れ渡っていた。綺麗な青い空だ。身体をぐっと伸ばし欠伸をひとつ零す。
「ちゃん、入ってもいい〜?」
「半兵衛さん!どうぞ。」
襖を開くと半兵衛さんが立っていた。彼は部屋に入ってくるとそのまま襖を閉じる。そしてにこにこ笑いながら顔を近付けてきた。
「ちゃんって僕とあんまり歳変わらないよね?敬語じゃなくてもいいよ?」
「えっ、でもお世話になってる身ですし…。」
「昨日秀吉様の護衛役になったでしょ〜?それなら同じ軍の一員だよ。」
「…そっか、それなら敬語じゃなくて普通に話そうかな。よろしくね、半兵衛くん!」
「うん、僕もそっちの方が嬉しい!あ、そうそう。馬術の件で呼びに来たんだけど、ご飯食べる前にやるみたい。官兵衛が呼んでたから一緒に行こう!」
「うん!」
半兵衛くんに手を取られ緩く握り返す。なんというか半兵衛くんは見た目が凄く女の子らしい…と言っては失礼かもしれないけれど他の人達と違って何となく話しやすい。他愛ない話をしていると半兵衛くんは軽く私の顔を覗き込みトン、と首元を指差してきた。昨日、人狼に噛まれた場所だ。
「この鬱血痕、どうしたの?」
「え、鬱血?」
噛まれただけで鬱血した覚えはないんだけ……ど…。
帰って来てからの出来事が一瞬フラッシュバックする。ま、まさか…!
「ごめん、半兵衛くん!ちょっと秀吉さんの所寄らせて!!」
「ふふっ、いいよ〜!面白そうだから僕もついて行くね!」
廊下を走り回り、半兵衛くんの指示を受けながら秀吉さんの部屋へ向かう。たどり着いた部屋の前で一呼吸置くのも忘れて襖を開くと当の本人は呑気にとうきちくんにご飯をあげていた。
「あれ、、半兵衛?おはよう!今日も朝から元気だね〜。」
「元気だね〜、じゃないですよ!昨日ここにキスマ…口付けした痕つけましたね!?」
食って掛かる勢いで肩を掴むと秀吉さんはいつもと変わらない様子でイタズラっ子のような笑みを浮かべる。なんか痛いとは思ったけれど…!
「だってあんたは俺の未来のお嫁さんだからね。人狼に手を付けられたのが腹立ったんだよ。それ、俺の所有物だよって印だから。」
「秀吉さんの嫁になる予定はありません!それにこんな目立つもの…!」
「目立たせてるんだよ。あんたを変な男から守らないと。」