第3章 厄魔
「ごめん。もう人狼がのことを嗅ぎつけてるとは知らなかったんだ。今度はこの城から逃げ出す前にあんたのこと、ちゃんと捕まえるから。」
そう言って抱きしめる腕が強まる。…自ら危険をおかしてしまったのは私なのに。何故秀吉さんが謝るんだろう。
「…無策で飛び出したのは私なので気にしないで下さい。それにもう、勝手にどこか行ったりしませんから。」
「そうしてくれると有難いな〜。探すの凄い大変だったし、厄魔に囲まれてるところを見た時は流石に血の気引いたから!」
言葉とは裏腹に笑う秀吉さん。かと思えば急に首筋へ頭を埋められた。人狼に噛まれたところの近くに唇がやんわりと触れる。ま、また噛まれる…!そう思って身を固めたがいくら経ってもその痛みは来なかった。代わりに唇が触れた箇所からチクリとした、一瞬の痛みが走る。
「…何かしました?」
「んー?上書きをちょっとね。俺はそろそろ寝るよ。あんたもちゃんと休んで。」
どこか満足げに抱き締めていた腕を解き立ち上がった秀吉さん。唇があたっていた場所へ触れると若干湿ってはいるが、血は滲んでいない。
「おやすみ、。また明日ね〜。」
「あ、おやすみなさい。」
トン、と小さな音を立てた襖が閉じられる。明日からはちゃんと豊臣軍の一員として過ごせる…かもしれない。そう思うと昨日より少し気持ちが軽くなった気がして急激に襲う睡魔に身を委ねた。